2022年

「どうだった」
 「なにが」
「2022年」
 「まだ終わってないでしょ」
「もう終わるでしょ」
 「何で人は年が終わるとその年を振り返ろうとするんだろうね」
「年が終わるからでしょ」
 「単なる区切りにすぎないと思うけど」
「でも区切りだからね」
 「そっか」


「どうだった」
 「資本主義から離脱したくなった」
「なんの話してるの」
 「2022年」
「振り返りの第一声で『資本主義から離脱したくなった』って言う人いないよ」
 「それが2022年だから」
「もうお金を稼ぎたくなくなったの」
 「それもあるけど」
「それもあるんだ」
 「資本主義の担い手としてでしか物事を語れない自分に限界を感じる」
「つらいね」
 「民主主義の敵は、不労所得労働者なんだよね」
「ピケティだ」
 「でも、結局僕たちは資本主義に加担しているんだよね」
「離脱する術はあるの」
 「それがあったら苦労しないよ」
「そっか」


「年始に立てた目標はどうだったの」
 「なんとも言えないね」
「ふうん」
 「少しずつ継続しているけど目的化している側面もあるかもしれない」
「でも継続しているのは良いんじゃない」
 「だと良いけど」
「うん」
 「でも、継続は良いって誰が決めたんだろうね」
「さあね」
 「僕たちは『継続』に囚われているのかもしれない」
「じゃあ継続しなきゃ良いじゃん」
 「そういうわけにはいかないでしょ」
「そっか」


「音楽とかもやってたでしょ」
 「リハーサルと本番は別物だよね」
「何があったの」
 「聞かないで」
「そっか」


 「良いこともあった」
「なら良かった」
 「自分がやっていることは大事なことだ、と人から言われた」
「最高じゃん」
 「最高だよね」
「最高」
 「でも、最高なこと以外が、あまりにしょうもなく見えるようになってしまった」
「しょうもないことがあるから、最高なこともあるのかもしれない」
 「そっか…」


「来年の抱負は」
 「まだ終わってないでしょ」
「もう終わるでしょ」
 「何で人は年が明けるとその年の抱負を語ろうとするんだろうね」
「年が明けるからでしょ」
 「単なる区切りにすぎないと思うけど」
「でも区切りだからね」
 「そっか」
「良いお年を」
 「うん、良いお年を」

良いお年を。